6 原始共同体内の問答

                                    今年もまた梅が咲きました。もうすぐ春です。
 

 
6 原始共同体内の問答 (20140304)
 言語によって、ヒトの個体と群れは、類人猿の個体と群れとは異質なものになっただろう。では、どこが異質なのだろうか。
 
 言語によって、人の群れは、原始共同体になる。共同体は、規則をつくり共有する。また、計画を立て共有する。類人猿でも、群れの規則をつくることは可能である。しかし、人間は、その規則を言語によって明示し、規則はより複雑化し、大きな体系を作る。さらに、その体系は、世界の成り立ちや共同体の歴史についての物語と結合するだろう。共同体は、世界の成りたちや、共同体の歴史物語を共有するだろう。
 共同体は、人が単独では解決できない問題を解決するために作ったものではない。共同体の中で、人は共同体の成員として生まれて、共同体の成員として生存可能である。共同体は、人の存立に先立って存在している。したがって、共同体の中で人々が語る問題は、共同体が抱える問題であり、その解決策を相談し合意し、共同体で実行する。
 共同体の中で、二人の利害ないし二つの小グループの利害の間に対立が生じる場合があるだろう。しかし、共同体の中では、共同体にとっての利害の考慮を、つねに優位において決定が行われるだろう。なぜなら、人は共同体を離れては存続できず、共同体が、共同体としての利害を追求することは自明のことだからである。人にとっての利害は、常に二義的なものである。
 
 言語によって、ヒトの群れが人の共同体に変化するのと同じように、ヒトの個体もまた、類人猿の個体よりもより自立性を持った個体になるだろう。人は鏡に写った自分を自分だとわかり、自分を指差しや名前や人称代名詞で指示することができ、「自分の物」という意識が生まれ、自分が損害を受けた時には、復讐しようとするようになる。自分の共同体の中での地位や役割を理解し、自分の過去を記憶し、自分の未来についての一定の予測をする。人は、言語によってそういう個体となるだろう。
 
 

 

 
 

投稿者:

irieyukio

問答の哲学研究、ドイツ観念論研究、を専門にしています。 2019年3月に大阪大学を定年退職し、現在は名誉教授です。 香川県丸亀市生まれ、奈良市在住。

「6 原始共同体内の問答」への1件のフィードバック

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